老若男女問わず、だれもが好きなシュークリーム。シュー生地の中にカスタードクリームを詰めたシンプルなお菓子ですが、パイやクッキーを取り入れたもの、プチサイズのものなど、それぞれに個性が光っています。そんなシュークリームが人気のお店を取材しました。
シューバード(Choux Bird)
京都・長岡京生まれ、2024年3月オープンのシュークリーム専門店「シューバード(Choux Bird)」の「温かくて冷たい」新感覚のシュークリームは、シュー生地をオーブンで温めて、冷たいクリームを詰めて提供されています。生地は焼き上がるとサクサクでバターの香り高い風味が漂い、中のカスタードクリームは新鮮な卵をたっぷり使った、トロリとした濃厚な味わいです。
シューバード(Choux Bird)/ ニューバード(New Bird)
- 住所
- 京都府長岡京市井ノ内下印田7-7
- 電話
- 075-952-0423
- 営業時間
- 9:00 ~ 17:00 カフェ L.O.16:30
- 定休日
- 火曜・水曜

クロワッサン専門店だからできた新感覚のパイシュー


シューバードのルーツは、1977年創業の「バードチェーン」という名前のパン屋さんです。それから40年以上、地元のお客様に愛されてきましたが、2020年からクロワッサンの専門店「ニューバード」としてリニューアル。さらに2024年3月にシュークリーム専門店「シューバード」を開業し、現在はこの2業態で営業しています。
シューバードのシュークリームは、オーダーを受けてから温め直した熱々のシュー生地に、冷たいカスタードクリームを詰めた新感覚の美味しさです。以前は工房になっている別の建物で販売されていましたが、「クロワッサンもシュークリームも両方買いたい!」というお客様の声を受けて、クロワッサン専門の本店「ニューバード(New Bird)」で販売するようになりました。
クロワッサン専門店「ニューバード」オープンの際に、シェフパティシエとして山添秀樹氏が招かれました。山添シェフはヒルトン大阪や神戸北野倶楽部など、数々のホテルや有名店でシェフパティシエや店舗経営を経験した実力派。それまでのベーカリーにはない洋菓子のノウハウを持ち込み、クロワッサン専門店やシュークリーム専門店のスタートに貢献しました。
クロワッサン専門店が、なぜシュークリームをつくることになったのかお聞きすると「クロワッサンだけではなく、何か今までにない斬新なスイーツをつくりたいとみんなで相談したとき、クロワッサン生地が使えるパイシューはどうだろうか?という話になりました。ただのパイシューにとどまらず個性を際立たせるため、温かい生地に冷たいクリームを入れるというアイデアが生まれました」(山添さん)。


進化を続けるパイシューの可能性は無限大
パティシエ歴30年以上の山添さんが、素材、焼き加減、大きさなど、すべてにこだわって試作を重ねてたどりついたクロワッサン生地を活かしたシュークリームは、上質なバターをふんだんに使ったクロワッサン生地にシュー生地を重ねているので、上下二層に分かれていて、焼き上がるとサクサクでバターの香り高い風味が漂います。
この進化形シュークリームの開発には1年以上かかりました。シュー生地とクロワッサン生地が同時に焼きあがるようにするのが難しく、試行錯誤を重ねました。小麦粉は「カメリヤ」や「バイオレット」などをブレンドし、北海道産の発酵バターや大山牛乳など、国内外の素材を厳選して使用しています。クロワッサンの生地は4つ折りを2回だけしてサクサクの食感を出しています。さらにカスタードクリームを冷凍したときの離水を防ぐため、生クリームを混ぜるなど独自の工夫をこらしています。
シューバードの定番は、カスタードとベルギー産チョコレートを使用したチョコ味の2種類。その他に、暑い季節に喜ばれる「アイスシューバード」バニラ450円、抹茶470円(いずれも税込)などがあります。また期間限定の商品として、ピスタチオクリームにいちごとバナナのジャムをのせた「いちご&バナナとピスタチオクリーム」、「カスタードとチョコといちごのモンブラン」、「ブラックベリーのティラミス仕立て」など、山添シェフが次々と新しい味を生み出しています。


オーブンで焼いたばかりの熱々のパイシューは、クロワッサンならではのサクサクの食感と広がるバターの芳醇な香りが魅力です。カフェスペースでは、オーダーを受けてから生地を温めて冷たいクリームを詰めるので、1分以内に食べるのがベストなのですが、「お土産にしたい」「家で食べたい」というお客様向けに、持ち帰り用のシュー生地と冷凍クリーム(保冷剤付き)のセットを発売しました。自宅でクリームを詰めるので、食べたいタイミングで出来立てのシュークリームが味わえると好評です。
「オープンから約1年、いろいろな年代のお客様が来られます。とくにご家族連れのお客様に人気で、お子様がクリームを詰めるのを楽しんでくださっているようです。ギフトとしても、もっと利用していただけるよう、今後も工夫を重ねて、お客様の期待に応えていきたいと思っています」(山添さん)。
2025年5月に、テイクアウト専門の「ニューバード烏丸店」を開業しました。「主なターゲットは観光で京都を訪れるお客様なのですが、クロワッサンやサンドイッチ、常温で食べられるシュークリームを販売して、食べ歩きできるようにしています。シューバードの良さを伝えつつ、より多くの人に知ってもらう機会になればと考えています」(山添さん)。


シューアラクレーム カプリ
(chou à la crème Capri)藤井寺店
28歳の女性パティシエが手がけるシュークリーム専門店「シューアラクレーム カプリ」のショーケースには、コロンと丸いクッキーシューの上に、板状のチョコレートをあしらった色鮮やかで美しいシュークリームが並んでいます。お店のブランドカラーはさわやかな水色。オリジナルの持ち帰りBOXも水色のオシャレなデザインで手土産にも人気です。
シューアラクレーム カプリ(chou à la crème Capri)藤井寺店
- 住所
- 大阪府藤井寺市岡2-8-37 フジビル 1F
- 電話
- 072-959-7683
- 営業時間
- 10:00~18:00
- 定休日
- 不定休

ここにしかないジュエリーのようなシュークリーム


大阪府河内長野市で誕生した「シューアラクレーム カプリ」。「その当時、まだクッキーシューの専門店がなかったので、クッキー生地をのせて二層にしたクッキーシューの専門店でいこうと決めました。当店ならではの個性を出したかったので、フランス旅行で見たフォンダンをのせたシューを参考に、日本人に合うよう甘すぎるフォンダンではなくチョコにして、シューの味がイメージしやすい色と模様をつけました」(角島さん)。
中に詰めるクリームは、ベースのカスタードクリームに味付けしているのではなく、それぞれ一からつくっています。たとえばフランボワーズは、風味が飛ばないよう短時間の加熱にするなどこだわっていて、素材の味が楽しめる上品な味になっています。

オーナーパティシエの角島 瑞希さんは、製菓専門学校卒業後すぐの21歳で開業しました。女性ならではの結婚、出産、育児というライフスタイルの変化などを考えると、できるだけ早くお店を持った方が良いのではないか、と考えたそう。しかし周囲からは驚きと反対の声ばかりで、想像もできない失敗や苦労もありましたが、お母様が協力してくれたことが大きかったと言います。仕事をしていて一番楽しいのは、シュー生地がぷくっとまん丸に焼けてきた時で「その瞬間がとってもかわいい」と思うそうです。
店頭のショーケースには「カスタード」390円、「チョコレート」410円、「抹茶」410円、「フランボワーズ」470円、「キャラメル」410円、「カフェオレ」410円、「NYチーズケーキ」460円、「いちごみるく」470円(いずれも税込)の8種の定番と、本日のおすすめが並んでいます。これらの他に季節に応じたラインアップもあり、これまでに開発したシュークリームは150種類以上になるそうです。
カスタードクリームの詰まった「プチシュー」は、上からかけたざらめの一部が溶けてザクザクとした食感が楽しめます。シュークリーム以外にも焼き菓子などが、店頭を飾っています。


あふれるアイデアで魅力ある商品をつくり続ける
専門店にすることで、ここでしか食べられないものがつくれるのではないかと、どんどんイメージが湧いてきたシュークリームを選び、何度も試作を重ねた角島さん。店名の「カプリ」は、シュークリームをかぷっと食べる音から名付けました。若くして始めた店なので、人とは違う個性を出したいと、ビビットな水色をテーマカラーに選び、『自分のお城』を完成させました。
「私は食べることが好きなので、ケーキ屋さんだけでなく、いろいろなお店をリサーチしています。特にコンビニスイーツや百貨店で流行っているものには注目しています。オープンから8年経ちましたが、スタッフと相談したり、お客様からの要望でアイデアをもらうこともありますが、こんな味もやってみたいという気持ちが尽きることはありませんね」(角島さん)。


2025年の「大阪・関西万博」では「食と祭りEXPO 大阪のれんめぐり」の河内長野市ブースに出店。「生まれ育った大阪で行われている関西万博を盛り上げたい!」と2つの商品を開発しました。ミャクミャクカラーを取り込んだ「スペシャルシュークリーム」と、たこ焼きにそっくりなプチシュー「たこ焼きシューアイス」です。「食べ物らしからぬ色やデザインに受け入れられるかと心配しましたが、皆さん遊び心を理解して面白がって食べてくれました。これほどのプロジェクトに参加できてよかったと感動しました」(角島さん)。
万博以外にもいろいろな催事に積極的に出かけている角島さん。遠くてお店に来られない人にも知ってもらえることがメリットだといいます。「近くに来てくれてうれしい」とか、商品を見て「かわいい!」という声を聞くと、お客様と直接話せるこうした機会を大切にしていきたいと考えています。
角島さんは専門学校やオンラインスクールの講師や、シュークリームのレシピ本も監修しています。「スイーツは人を満ち足りた気分にさせると思うんです。パティシエはあこがれの職業ではありますが、厳しい世界です。だからこそ、これからパティシエを目指す人が、明るい未来を感じてもらえるようなパティシエになりたいんです。何もわからない私を助けてやろうと、手伝ってくださったスタッフや取引先の方に恵まれて、今の私があることを知ってもらいたいと思います」(角島さん)。


ポアール(POIRE) 帝塚山本店
大阪の高級住宅街・帝塚山のランドマークとして街を見守り続けてきた、丸い窓が印象的なお店。関西に数えるほどしか洋菓子店のなかった1969年に誕生し、フランス語で西洋梨を意味する「ポアール」と名付けられました。この店の創業時から今に受け継がれているプチシューは、伝統的なヨーロッパの洋菓子を目指したポアールの大切な原点です。
ポアール(POIRE) 帝塚山本店
- 住所
- 大阪府大阪市阿倍野区帝塚山1-6-16
- 電話
- 06-6623-1101
- 営業時間
- 9:00~20:00 カフェ9:00~20:00 カフェ L.O. 19:30
- 定休日
- 元日

半世紀続く、創業当時から人気の超ロングセラー


ポアールの「プチシュー」は、1969年(昭和44年)の創業当時からある一口サイズのシュークリームです。薄くなめらかなシュー生地の中に、バニラビーンズが贅沢に入ったカスタードクリームがぎっしり詰まっていて、洋酒がふんわりと香ってきます。
「実はこのプチシューは、店ができたときからありましたが当初は販売しておらず、カフェのコーヒーに添えて出していたそうなんです。創業者の父は『一番自信があるからあえて売らなかった』と言ってましたね」(辻󠄀󠄀井さん)。
コーヒーを注文されたお客様から、「添えられているプチシューを買いたい」という声が高まり、満を持して販売を開始しました。
50年以上の歴史があると親子3世代のお客様や、久しぶりに食べて懐かしいと感動される方など多くの常連さんがいます。「子どものころはもっと大きいと思っていた」とか、「父親がお土産に買ってきてくれた」と家族の思い出のそばにプチシューがありました。
グランシェフの辻󠄀󠄀󠄀井良樹さんは、まだ洋菓子が一般に広まっていない時代に「本物のケーキづくり」を目指していた父の背中を追うように、20歳でヨーロッパに渡り、スイスの有名パティスリーなどで技術を学びました。
ポアールのプチシューは皮が柔らかく、なめらかな口どけが魅力です。小麦粉は「バイオレット」を使用し、毎日朝から丁寧に焼き上げています。日によっては夕方には売り切れてしまうことも。「できればひと口で食べて欲しいんです。口の中でシューの皮がはじけて、クリームが広がる感じを楽しんでもらえると思います」(辻󠄀󠄀井さん)。
定番のプチシューですが、実は少しずつ変化しています。「伝統の味と言われるものの多くは、味が変わっているはずです」と辻󠄀󠄀井さん。社内にはプチシュー専門の部署があり、ベテランの職人たちが研究を続けています。「何十年も変わらぬクオリティを保ち、 伝統の味を守ることは、新しいお菓子を創造するよりもずっと難しいことだと感じています」(辻󠄀󠄀井さん)。
2019年、創業50周年を記念してプチシューが全面ブラッシュアップされ、カスタードクリームもパッケージも変わりました。ギリギリまで砂糖を減らして、何個でも食べられる軽さを目指しました。ただ砂糖を減らすだけでは味が薄くなり、コクが出にくいため、マダガスカル産のバニラの一番よいものを加えることで味の厚みを出し、よりあっさりと上品な味わいに生まれ変わりました。


最高の材料と職人の技術がつくりだす伝統の味
世界的に有名なマダガスカル産のバニラビーンズは高価ですが、ワンランク上の香りと美味しさは他に代わるものがありません。またエクレアに使用しているスイス・フェルクリン社のチョコレートは、100年以上変わらない伝統製法で、最高のなめらかさや風味を堪能できる幻のチョコと言われています。生地にもクリームにもよく合うバランスの良さで、口の中で溶ける瞬間が魅力です。日本ではポアールがいち早く取引を開始したのだそう。
現在プチシューとエクレアは、ギフトとしてご利用いただけるよう箱入りで販売しています。ポアール創業当初からのロングセラーである「プチシュー」と、プチシューとプチエクレアのハーフ&ハーフの「プティ・タ・プティ」があります。その他にあべのハルカスにある唯一の百貨店常設店舗「ポアール・アントレ店」限定の「プティ・タ・プティ フレーズ」や、シーズンによって変わる期間限定商品もあります。(2026年2⽉現在は「チョコベリー プティ・タ・プティ」 ※3⽉頃より8個⼊りで販売開始予定)


「わたしたちの使命は、お客様の期待を『心地よく裏切る』こと。支えてくださる大切なお客様の信頼にしっかりと向き合い、期待以上のものを提供して、お客様に喜んでいただくことが一番重要だと思っています。プチシューはお店が生まれたときからある商品で、当店の全身に血液をまわす心臓のような存在。シンプルで普遍的なポアールのプライドが詰まった逸品です。スイーツはダイエットの敵と思われがちですが、心を豊かにしてくれる食べ物です。最近では『美と健康とスイーツ』をテーマに大学と共同開発しているサプリの会社とタッグを組むなど、挑戦を続けています。コラーゲンやプラセンタのゼリー、低糖質のもの、ワンちゃんと一緒に食べられるケーキなどアイデアは尽きません」(辻󠄀󠄀井さん)。


クロワッサン専門店としてのノウハウをベースに、「温かくて冷たい」といった記憶に残るアイデアで、お客様の心をつかんだお店。若くして独立し、個性的で美しいシュークリームを150種類以上も生み出してきた女性シェフの店。洋菓子店が珍しかった時代からつくり続けてきた超ロングセラーのプチシューを店の中心と据えている老舗。シュークリームは多くの人に愛される定番スイーツだけに、今回の取材でいかに特徴を打ち出していくかが人気のカギとなってくると感じました。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2025年11月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。
