第5回
味噌ラーメンは冬だけじゃない
味噌ラーメンは冬だけじゃない
味噌ラーメンに歴史あり
塩味が一般的だった中華料理の汁麺は、醤油を使ったタレと合わせる事で、日本特有のラーメンへと進化していった。日本で古くから馴染まれてきた調味料である「味噌」をタレに用いた味噌ラーメンは、約70年の歴史がある。
札幌「味の三平」の大宮守人店主は、「日本人は味噌をもっと活用すべきである」と書かれた雑誌の一文をヒントに考案し、1955年頃に味噌ラーメンをメニューに加えて話題を集めた。また、1965年に東京と大阪の百貨店で行われた「北海道物産展」に出店した「熊さん」の味噌ラーメンが話題を集め、札幌の味噌ラーメンはご当地ラーメンの先駆けとしてブームになった。札幌では「醤油」「塩」「味噌」を揃えて営業する店が多く、この三味をラーメンの基本と捉える人が増えた。そのブームを受けて、東京の中華料理店が、1967年に味噌ラーメンを看板にしたチェーン店「どさん子」を立ち上げ、1977年には1000店舗を突破する人気ぶりだった。
その後「純連」「すみれ」などのこってりした味噌ラーメンが話題になるなどして、札幌ラーメンは「日本三大ご当地ラーメン」の一つに数えられている。
全国に広がる、味噌味のご当地ラーメン
2025年時点で全国各地に185種類あるご当地ラーメン。札幌ラーメンを筆頭に、味噌味が数多く全国に広まっている。山形県赤湯町(現:南陽市)では、味噌汁をヒントに1960年頃に「赤湯ラーメン」が考案。辛味噌を乗せ、徐々に溶きながら食べるそのスタイルは、宮城県仙台市にも伝わり「辛味噌ラーメン」として定着している。新潟県では、巻町(現:新潟市)で1973年頃に濃厚な味噌味がベースで、あっさりしたスープで割りながら食べ進める「新潟濃厚味噌ラーメン」が生まれ、上越地方では、妙高市にある「食堂ミサ」から白味噌を使った「上越味噌ラーメン」が生まれた。静岡県清水市(現:静岡市)では、シンプルな塩味のラーメンの上に味噌玉を乗せ、溶きながら味を変化させる「溶き味噌ラーメン」が話題を集め、高知県では、味噌ラーメンにとんかつを乗せた「みそカツラーメン」を提供する店も。
また、新たな味噌味を求めて創作されたご当地ラーメンもある。長野県では、佐久市の「安養寺みそ」を活用した「安養寺ラーメン」が2008年に、その後に信州味噌を使った「信州味噌ラーメン」が登場した。富山県では2010年に、入善町の味噌を用いた「入善ブラウンラーメン」が、三重県では2013年に、牛骨味噌味の「亀山ラーメン」が考案された。
味噌ラーメンは夏に弱い?
首都圏や関西圏などのラーメン専門店でも「味噌ラーメン」が登場する事が多いものの、札幌ラーメンを標榜する店以外では「冬季限定」のケースが多くなっている。味噌ラーメンには「札幌」「山形」「新潟」など、雪国のイメージが強いのも一因と思われ、体を温める味噌は冬向きではあるが、美味しければ季節を問わずに食べたいと思うもの。そう思って、味噌ラーメンも人気だったラーメン店主に話しかけてみたら、「4月頃になると、味噌を頼んでいた人も醤油や塩を頼むよね」との事。数が出なくなると、味噌ダレが時間経過で変質してしまう事もあり、味噌ラーメンを通年で提供するのは難しくなる。
その一方で、スープや味噌ダレに個性を出す事で、通年で味噌ラーメンを提供したり、味噌ラーメン専門店として営業するラーメン店も増えてきている。
煮干しスープ×味噌で挑む気鋭店へ
味噌ラーメン専門店として話題の店、町田市の「RA-MEN 3SO.(ラーメン スリーエスオー)」に伺った。

町田市木曽で2010年に開業した味噌ラーメンの人気店が、JR横浜線成瀬駅近くに2025年8月移転。さっそく行列ができる人気店になっている。


メニューは「ニボシ3SO」と「3SOらーめん」、他に期間限定ラーメンがあり、この日は「牡蠣クリーミー3SO」を提供。
店名にもなっている「3SO」は「みそ」と掛けている。

看板メニューの「ニボシ3SO」。

豚骨の旨みを漂わせる白濁豚骨スープに水出しも活用した煮干し出汁をブレンド。タレには赤味噌と白味噌を合わせている。

麺は自家製の中太縮れ麺。コシを持ちながらプルンとした食感があり、スープを勢いよく拾い上げてくれる。

タマネギやモヤシ、キャベツなどの野菜と挽肉をしっかり炒めているので、スープに優しく馴染んでいく。
その上には白ネギが乗り、花型のお麩がアクセントになっている。

炙ったチャーシューを噛みしめると、味噌の味が舌に加わって一体感が感じられる。

炒めた時の香辛料などの効果もあって、野菜をグイグイと食べられる一杯にまとめられている。
新潟の味を学び、更なる高みを目指す味噌ラーメンの人気店へ
次に、味噌ラーメンが人気の横浜市「味噌ラーメン 雪ぐに」へ伺った。

最寄駅は、横浜市営地下鉄ブルーラインの中田駅。横浜市旭区中田南で2015年に開業し、2021年3月に中田東に移転。

客席以外に10人が入れる待合室が店内にあるが、それでも、平日の昼過ぎには外で10人近くが並ぶ人気ぶり。
待っている間に店員さんがメニューを渡してくれるので、注文前に検討できるのも嬉しいところ。

味噌味は「味噌」「辛味噌」「甘エビ味噌」の3種類。
「醤油」や「塩」も気になるが、前後のお客さんも味噌味の注文が続いており、やはり味噌ラーメンが人気のようだ。

一番人気の「味噌」。新潟県妙高市の名店「食堂ミサ」で修業した味をベースに、こってり感もプラスして磨き上げた一杯だ。

「鶏」、「豚」、煮干や節類を使った「魚介」、3種類の出汁をそれぞれに炊いて合わせたスープを、挽肉やタマネギ、モヤシなどと炒めている。 味噌は妙高の醸造所と相談し、熟成期間が異なる複数の味噌をブレンド。その比率を季節ごとに変えているというから、その手間の掛け方に驚く。

軽く縮れた中太麺は自家製。「きたほなみ」や「ゆめちから」に、もち小麦なども合わせていて、モチっとしながらプルンと弾くような食感も出している。

チャーシューは肉質がしっかりした豚モモ肉を使用。吊るし焼きやレアチャーシューなどもトッピングで追加できる。

炒めてしんなりしたモヤシやタマネギに、味噌味のスープが馴染む。

サイドメニューの「ネギメンマライス」。タレを絡めたたっぷりのネギの下には、角切りしたメンマがゴロゴロと入っている。

麺を食べたら、スープや野菜をレンゲですくってごはんの上に。もちろん相性は抜群で、ペロリと食べられる。
季節を問わず楽しめる「味噌ラーメン」で商品力をアップ!
ラーメン専門店では、醤油ラーメンを先頭に、塩ラーメンやつけ麺などを加えているケースが多くあるが、醤油味は提供店が多いだけに、美味しいだけで話題を集めるのは難しい。一方で、まだ提供店の少ない個性的な味噌ラーメンを通年で提供すれば、話題になる可能性は高くなると思われる。冬だけでなく、夏でも食べたくなる味噌ラーメンの登場に期待している。
プロフィール:山本剛志さん
1969年東京都生まれ。2000年の「テレビチャンピオンラーメン王選手権」で優勝。
全国10000軒以上のラーメン店を巡り、ブログなどでラーメン情報を発信中。日本ラーメンファンクラブ実行委員会代表委員。

プロフィール:山本剛志さん
1969年東京都生まれ。2000年の「テレビチャンピオンラーメン王選手権」で優勝。
全国10000軒以上のラーメン店を巡り、ブログなどでラーメン情報を発信中。日本ラーメンファンクラブ実行委員会代表委員。

※このページの掲載情報は2026年02月時点のものです